SNSマーケティングもWebサイトを活用したWebマーケティングも、企業とお客様との間のコミュニケーション戦略の上に成り立っている施策の一つにすぎません。
ですので、SNSマーケティングのみ実施すればOKではありませんし、Webマーケティングのみ行えば顧客獲得が恒久的に行えるというものでもありません。
コミュニケーション戦略をしっかりと把握し、設計することで、現在行っているマーケティング施策の精度も格段に変わってくるはずです。
今回は弊社(アール株式会社)が取り組んでいるWebマーケティングを中心としたコミュニケーション戦略についてご紹介させて頂こうと思います。
目次
コミュニケーション戦略とは「人を動かす戦略」
宣伝会議が発行する磯部光毅著 手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略 によれば、「コミュニケーション戦略」は時代とともに新たな戦略論が積み重なり、今現在”7層構造のミルフィーユ”状態にあるとされています。
<7つのコミュニケーション論>
・ポジショニング論
・ブランド論
・アカウントプランニング論
・ダイレクト論
・IMC論
・エンゲージメント論
・クチコミ論
この7つのコミュニケーション戦略に沿って、アールの施策をみていきましょう。
①ポジショニング論
ポジショニングとは「違い」によって人を動かす戦略論。
顧客ニーズを汲み取りながら、お客様の頭の中で、競合と違った位置づけを得ること。
ポジショニングは、他社との差別化を図り、選ばれる理由を明確化する狙いがあります。
アールの取り組み
アールでは、こうした戦う市場を定義するための取り組みとして、クライアント企業の強みや弱みを把握するためのSWOT分析や、他社競合のマーケティング施策の把握や、他社との差別化を検討する上で3C分析を行い、ポジショニングを明確化させ、コミュニケーション戦略の立案を行っています。
②ブランド論
ブランド論は、「らしさ」の記憶で人を動かす。
ブランドは「価値」「行為」「絆」を生み出すことができ、プレミアムな価格維持や長期的な反復購買(リピート)に寄与する。
Webサイトだけでなく、チラシやTVCMはじめ、広告物全般を統一したブランドイメージで展開することで、点が線となり、御社の製品・サービスのブランド認知が加速し、ブランドが「価値」を持つことで顧客との「絆」が生まれ、選ばれる理由として機能します。
アールの取り組み
ここ数年は人手不足も重なり、Webマーケティングに取り組むための【機能するWebサイトの制作】に注力してきたため、Web以外の広告物制作の依頼をお断りしていました。
ですが、Webマーケティングを突き詰めて実施していく中で、最終的にはこうしたコミュニケーション戦略全般、【点】ではなく【面】でマーケティングに取り組んでいく必要性を再認識し、今のところコンサル案件のみですが、Web以外の広告物を含めたブランディングに関してもお手伝いさせて頂いてます。
マーケティングはWebマーケティングのみでは完結しません。企業のマーケティング戦略(コミュニケーション戦略)、更に言えば経営戦略といった上位概念まで含めた形で取り組まなければ成功しません。試行錯誤の末、私たちもそうした考えに到達しています。
③アカウントプランニング論
アカウントプランニングは「消費者の声に耳を傾けるプランニング手法」で、消費者の「深層心理」が人を動かすというアプローチ。
弊社Webサイト上でも「機能するホームページ」とは、表面的ニーズだけではなく、潜在的ニーズも解決することが必要であるとお伝えしています。
故・スティーブ・ジョブズも語っていました。
「多くの場合、人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ。」
消費者は日常生活で本質的に何を求めているのか、本当はどんな問題を解決したいのかということに気がついていません。もっと言うと、自分が何を欲しているのかさえも分からないのです。
そうした声にならない声=「深層心理」=お客様の隠れた本音を探りあて、顕在化させ動機づけを行う戦略がアカウントプランニングです。
アールの取り組み
お客様の隠れた本音を引き出すため、時に直接エンドユーザーである顧客に対し、マーケティングリサーチを兼ねた座談会を企画し、Webサイトのコンテンツとしてのリリースも行っています。
例えば、下記はau大分春日店さんで行ったリサーチです。
●子育てママ座談会「楽しく・賢く使うタブレット活用法」
http://www.au-oitakasuga.com/proposal/proposal-normal/994
●女子高生座談会「スマートフォンでコミュニケーション!JKスマホ事情」
http://www.au-oitakasuga.com/proposal/proposal-normal/1486
●イマドキ中学生のリアルなスマホ事情
http://www.au-oitakasuga.com/proposal/1633
●学校でもプライベートでも大活躍。イマドキ男子大学生のスマホライフとは?
http://www.au-oitakasuga.com/proposal/1800
こうしたリサーチを通して獲得した情報を新たな戦略に落とし込み、再度コミュニケーション戦略やコンテンツ設計を組み直すなどの調整を行ないます。
④ダイレクト論
ダイレクト論は、「反応」の喚起が人を動かす。
お客様の反応を獲得しながら関係を深め、顧客生涯価値【LTV】を高めることを目指す戦略。
ダイレクトマーケティングは1960年代に既にアメリカで確立されたマーケティング手法で、【通信販売】というと馴染み深くて分かりやすいですね。
近年はここにデジタル化の波が押し寄せ、その手法もカタログ通販からeコマースに移り変わりました。
実はWebマーケティングはデータを扱うという部分で、このダイレクト戦略と非常に相性が良いとされ、BtoCに限らず、BtoBビジネスにおいてもこのダイレクトマーケティングの考え方が生かされはじめています。
Webマーケティングにおけるダイレクトマーケティング(アールの取り組み)
ダイレクトマーケティングの基本的な考え方は顧客のロイヤル化です。顧客をロイヤル化することでライフタイムバリュー【LTV】を最大化させる狙いがあります。
※ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)【LTV】とは顧客が生涯の取引期間に通じて企業にもたらす利益のこと。
<顧客のロイヤル化までの流れ>
①潜在顧客
↓
②見込み客
↓
③新規顧客
↓
④リピート客
↓
⑤ロイヤル客
①潜在顧客にレスポンス広告を打ち、多くの②見込み客を獲得。レスポンス広告からランディングさせたWebサイトで製品やサービスを通したソリューション提案を行ない、購入やお問合せを促します。そこから③新規顧客を再度注文してくれる④リピート客へ昇華させ、最終的には⑤ロイヤル客化していくのです。
ではその流れをもう少し詳しくみていきましょう。
見込み客の獲得
①潜在顧客を②見込み客にするため、新聞・テレビ・雑誌・折込チラシなどのマス媒体を活用。ネットへの流入を促し、リスティング広告やディスプレイ広告(バナー広告)を活用して、顕在客を獲得します。同時にコンテンツマーケティングを実施することで、SEOからの流入を刺激します。
ここでの広告物に関しては、とにかく自社の製品やサービスの存在をアピールするため、目に留まるキャッチやクリエイティブで興味・関心を引きつけることが大切です。コンテンツマーケティングに関しては、潜在顧客の潜在ニーズに答えた問題解決型のコンテンツ作成が必要です。
広告経由でサイト流入した際にはランディングページ(LP)へと誘導します。
ランディングページとは、ユーザーが最初にランディング(着地)するページ全てのことを指すのですが、ここでいうランディングページ(LP)とは「広告施策用に作成するページで、製品やサービスの情報が1ページで完結する縦長のページ」のことです。
なぜTOPページではなく、ランディングページ(LP)を活用するべきなのかはまた別の機会に詳しくご説明させて頂きます。ここではひとまず、いきなり企業のTOPページや商品一覧ページに飛ばすでのではなく、ユーザーの欲しい情報へ直接アクセスしてもらい、せっかくアクセスしてくれた見込み客を離脱させないための施策であるということを認識して頂ければと思います。
ランディングページ(LP)には製品やサービスのベネフィットを中心に、ユーザーの悩みやニーズ、商品特徴や成分、著名人や一般人の体験談などを流入キーワードごと・流入先ごとに組み合わせ数パターン作成し、ターゲットの状況に合わせ最適化させたページをそれぞれに展開します。
そこから「お問合せ」や「無料トライアルのお申し込み」、BtoBであれば「ホワイトペーパー」や「資料カタログ」のダウンロードといったレスポンスを経て、見込み客情報を獲得していきます。
チラシ・広告・ランディングページはABテストを行いながら、PDCAを高速で回し、レスポンスの最大化を目指します。
指標
CPR(コスト・パー・レスポンス)=レスポンスを1獲得するために必要なコスト
CPO(コスト・パー・オーダー)=受注1件を獲得するために必要なコスト
CPA(コスト・パー・アクション)=お問合せ、資料請求やダウンロード数など、利益に繋がる成果を1件獲得するために必要なコスト
レスポンス件数=お問合せ、資料請求やダウンロード数など
顧客の獲得
②見込み客を③新規顧客にするため、レスポンスにより得られた顧客データを活用し、【トライアルが終了する時期】や【ホワイトペーパーダウンロード後検討時期】を見計らい、コールセンターからの電話(テレアポ)やDM送付を行ない、そこからのリアクションを細かく検証していきます。
メールマーケティングからWebへの再訪問を促す場合は、Cookie情報と顧客情報を掛け合わせることで、メールの開封率をはじめ、Webサイト上のどの情報にどれくらいの頻度で、どれくらいの時間滞在したのか、追加でどんな情報を取得(ダウンロード)して出ていったのかなど、Webサイト上の行動を個別に追跡。ユーザーの行動をスコアリング(数値化)することで、この見込み客が購買に対して今どのレベルにいるのかを判断し、レベルに合わせた施策を継続投下していきます。
ここでは、見込み客の行動(アクション)を計測するため、ホワイトペーパーやユーザーが「是非欲しい!」と思うような各種資料の作成が必要です。また、再訪問を促し、サイトの回遊率を高め流入後の足跡をデータ化するためにも、定期的なコラムやblogの更新など、常に最新の情報をWebサイトに追加していく必要があります。
顧客の維持
ここはCRMの領域です。既に蓄積された顧客データをもとに顧客を属性(購入金額やリピート回数など)ごとに分類し、属性ごとにアプローチを行ないます。顧客の属性ごとに、タイミング、チャネル、頻度なども最適化させるため、きめ細やかな設計が必要となります。
一度注文を頂いた③新規顧客を④リピート客にするためには、フォローのためのDMやメールを送る。定期購買コースをおすすめするなど、休眠客を復活させる施策も必要です。
因みに、マーケティング用語に「1:5の法則」というものがあります。これは新規顧客獲得には既存客の5倍のコストがかかるというもの。また「5:25の法則」では、顧客離れを5%改善すれば、利益が25%改善されるとも言われています。これらは顧客ロイヤリティの大切さ、既存客への対応の大切さがよく分かる一例です。
そうした意味でもこの顧客の維持に関しても、費用と労力を惜しまず、新規顧客獲得に対する施策と同等以上の取り組みが必要であると考えます。
ロイヤル客の獲得
④リピート客を⑤ロイヤル客にするためには、ロイヤリティプログラム(特別なサービスを行う)を用意する。クロスセルやアップセルなどのキャンペーンを実施するなどの施策が考えられます。
⑤IMC論
IMCとは、統合マーケティングコミュニケーション(Integarated Marketiong Communications)のこと。お客さんとの接点において、メッセージとメディアを複合的に用いるアプローチで、「接点」の統合で人を動かす戦略論です。
【メディアミックス】や【クロスメディア】と呼ばれる手法です。
アールの取り組み
日常生活における顧客との複数の接点を洗い出すため、アールではクライアント企業とともに、架空の顧客像であるペルソナを設定し、カスタマージャーニーマップの作成を行っています。
カスタマージャーニーマップとは、直訳すると「顧客の旅」です。架空の顧客として設定したペルソナが、製品やサービスの認知獲得から購買(お問合せ)を経由して、情報をシェア(拡散)するまで、消費行動の意思決定プロセス(現在はAISASを採用)に添って、消費者はどの様なタイミングで企業側が発信する情報と出会うのか、どんなタイミングでどういった情報によって意思決定を次へと進めていくのかを、感情の流れを含め、時系列で把握していくものです。
適切な情報を適切な相手に、適切なタイミングで、適切なチャネルを活用して届ける仕組みを構築することが目的となります。
IMC論は受け手主導のマーケティングです。顧客の行動に寄り添った戦略を立案する必要があります。
⑥エンゲージメント論
エンゲージメントとはお客様が能動的に関与することで生まれる、心理的なつながりである。
エンゲージメントには短期的に効果を求める「キャンペーンセントリック型」と、中長期的にファンを獲得する「オールウェイズオン型」の2パターンに分かれるとされています。
アールの取り組み
どちらかと言えば弊社では、中長期的にファンを獲得する「オールウェイズオン型」の施策として、問題解決型の情報提供を行うオウンドメディア運営を推奨し、ゆるやかなファンづくりに取り組んでいます。オウンドメディア運営の支援としてプロのライターによるコンテンツ記事作成代行も行っています。
⑦クチコミ論
クチコミ論とは、情報の「人づて」が人を動かすという戦略論です。
急速に浸透したソーシャルメディアをプラットフォームにした、情報の「人づて」を活用する戦略。「ファンづくり」と「ムーブメントづくり」が目的。
アールの取り組み
今やWebマーケティングを行う際に、SNSの運用は必須となってきました。
弊社SNSマーケティング運用の考え方や施策についてはこちらをご確認ください。(随時情報更新中)
まとめ
いかがでしたでしょうか?冒頭にもお伝えした通り、コミュニケーション戦略も情報技術の進化とともに、その時代時代の消費者行動に沿ったものへと進化しています。
どれが正しくて、どれか1つを採用すればうまくフィットするというものでもなく、”ミルフィーユ”状態とはよく言ったもので、どれも正解で、点ではなく面として全てをバランス良く計画し、実施していかなければなりません。
また、「エンゲージメント論」や「クチコミ論」に至っては、近年に生まれた新たな考え方であり、これからその効果検証が行われていくものです。ですので、前例が乏しい分、正解が分からない中、トライ・アンド・エラーを繰り返しながらチャレンジしていくというものでもあります。
私たちアールも日々試行錯誤を繰り返しながらも、ようやくこういったコミュニケーション戦略に沿った施策をプランニングできる様になってきました。引き続き今後も、こうした戦略のもとに立案される施策の提供を通して、少しでもクライアント企業のお役に立てればと考えています。