前回のコラムでは、SNSマーケティングの目的(Webマーケティングの目的)は顧客との相思相愛「1対1」の関係を構築することであるとお伝えさせて頂きました。
また前回コラム冒頭において、実は今回のテーマでもあるSNS運用の考え方(顧客との良好な関係性の構築)についても少しご紹介させて頂いてました。まとめると以下のようなものです。
●SNSマーケティングとは企業活動のコミュニケーション戦略の一部である
●SNSは広告ではなく、生活者(顧客)との双方向のコミュニケーションを図るツールである
●小手先のテクニックを採用するのではなく、届ける情報は常に生活者目線の問題解決に務める
基本的な部分は上記のような内容なのですが、実はここにもう一つの要素が加わらなければ、本当の意味での顧客のファン化には到達できないと私たちは考えています。
では、そのもう一つの要素とは何でしょう?
いやもったいぶる必要もないのですが、、もしよかったらこのコラムを最後まで読んで頂き、その答えと、私たちが推奨するSNSマーケティングに対する理解をほんの少しだけでも深めて頂ければと思います。
今回は、この最後のピースを含めた、SNSマーケティングで大切にしたい4つの考え方について、ひとつひとつ詳しくご説明させて頂きます。
目次
SNSマーケティングとは企業活動のコミュニケーション戦略の一部である
弊社ホームページ内の「初めての方へ」でも書いていますが、ホームページ運営が企業の経営戦略の中のIT戦略の中のWeb戦略の一部であるように、SNS運用もまた、企業活動のコミュニケーション戦略のなかでしっかりとした設計されたものでなければなりません。
コミュニケーション戦略とは
コミュニケーション戦略とは「人を動かす戦略」として、こちら Webマーケティングを中心としたアールのコミュニケーション戦略を徹底解説!で詳しく紹介させて頂いてますので、よかったらご覧下さい。
上記コラム記事でもご紹介させて頂いてますが、宣伝会議が発行する磯部光毅著 手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略 によれば、「コミュニケーション戦略」は時代とともに新たな戦略論が積み重なり、今現在”7層構造のミルフィーユ”状態にあるとされています。(今回もこの本の内容を参考にご説明させて頂きます。)
<7つのコミュニケーション論>
・ポジショニング論
・ブランド論
・アカウントプランニング論
・ダイレクト論
・IMC論
・エンゲージメント論
・クチコミ論
最後のクチコミ論の”情報の「人づて」が人を動かす“という戦略論。「ファンづくり」・「ムーブメントづくり」がSNSマーケティングの目的となります。
企業がコミュニケーション戦略としてSNSを活用しなければならない理由
2013年にマーケティング会社ニールセンが発表した「広告やブランドメッセージに対する信頼」グローバル調査によると、最も信頼されている宣伝媒体や情報ソースが「知人からの推薦」であるとされています。
企業から直接発せられた情報よりも「人」を介し接触した情報の方が信頼できると現代の消費者は感じているのです。
そうした「知人からの推薦」・「人」を介し情報を届けることのできるコミュニケーションツールがSNSです。近年はこのSNSを活用した「ファンづくり」・「ムーブメントづくり」が企業のコミュニケーション戦略においても重要視されるようになってきました。
※アメリカではすでに「コミュニティーマネージャー」という職種が存在しているとのこと。
SNS運用は事前の戦略設計が重要です
SNS運用は企業の貴重なリソース(時間と労力(お金))を投下して行う取り組みです。この取り組みが企業活動の一部であるならば、投資した時間やお金が無駄にならない運用を行うべきですよね。
まずは運営の目的や、どの様にしてその目的を達成するのかなど、投稿の内容から担当者の人選に至るまでしっかりと事前に設計を行わなければいけません。
ですが、中小企業がSNSをはじめる時って大体こんな感じではないですか?
社長 「知り合いの会社〇〇もやっているから、ウチもSNSをやってみよう。きみパソコン得意そうだからやってみてよ」
担当者「何を更新すればいいんですか?」
社長 「そんなもん、社員の楽しそうな写真とか、今日こういうセミナーに行ってきましたとか、そういう情報だろ。あぁそうだ!もう色々考えるのが面倒なら【本日の弁当】とか目の前にある情報上げとけばいいだろ」
こういったケース多くないですか?
【案ずるより産むが易し】で施策を即行動にうつすという意味では大変素晴らしいのですが、でも実はこれ一番ダメなパターンですよね・・・
ただヤミクモに目の前の情報を上げ続けるだけでも、SNSではそこそこの【お楽しみグループ】は形成されるはずです。しかし、それが御社の今後の経営を支える資産となり得るか?となると少々疑問が残ります。
SNS運用の目的は何ですか?誰にどんな情報を届けたいのですか?その情報を届けることでどういった行動変化を促したいのですか?まずはそうした運用の目的や期待する効果をしっかりと定義しておく必要があります。
そのためにも、事前の戦略設計は重要なのです。
SNSは広告ではなく、生活者(顧客)との双方向のコミュニケーションを図るツールである
SNSは広告ではなく、生活者(顧客)とのエンゲージメントを高めるための双方向のコミュニケーションツールだと考えて下さい。
※大きくは広告自体もコミュニケーションの手段なのですが、ここでいう広告とは、企業側から一方的に発信されるメッセージのこととして定義します。SNSは一方的に発信されるだけのメッセージではなく、生活者(顧客)との双方向のコミュニケーションを生み出し、エンゲージメントを高めるためのツールであると理解して頂ければと思います。
エンゲージメントってなに?
エンゲージメントとはもともと「約束」や「婚約」として使われる言葉ですが、マーケティングにおいては、「企業と生活者(顧客)との結びつき」や「絆」や「関わり」などとして使用されています。(経営用語としては会社に対する「愛着心」や「思い入れ」として用いられます)
エンゲージメントを高めてどうするの?
エンゲージメントが高まるということは、企業と生活者との結びつきが強くなるということです。企業と生活者との結びつきが強まった状態が「ファン化」です。「ファン化」した生活者は新たな情報伝達者(拡声器)となって、その企業の商品やサービスのクチコミを好意的に広げてくれるようになります。
6つのファンタイプ
こうした企業の商品やサービスを拡声してくれる新たなメディア「ファン」は、以下の6タイプに分けられます。
ロイヤルカスタマー
習慣的購買をする人であり、ブランドの魅力を深く感じている人。ただし、必ずしもソーシャルメディア上で積極的に発信する人とは限りません。
エバンジェリスト
もともとはキリスト教の伝道者の意味で、そのブランドを広めることが社会に良いことだと信じているほど熱狂的な信奉者。ロイヤルカスタマー中のロイヤルカスタマーで、もっとも濃度の濃い人ともいえます。
本来は、報酬は得ずに自発的にブランドの魅力を発信する人ですが、ときにそのブランドの社員(あるいは社長)という立場の場合も。ブランドにぞっこんになって語る人は、ユーザー・社員を問わずこうよばれ、強いブランドは必ずといっていいほど、「エバンジェリスト社員」を抱えています。
アドボケーツ
ブランドやプロダクトの情報発信、推奨してくれる一般の人々。報酬を得ているわけではありませんが、ブランドに関与し「語りたい」という気持ちが強い人のこと。多くはユーザーですが、そうでもない人も含まれます。
インフルエンサー
通常はセレブ、著名人や、高いカテゴリー知識を持った専門家などを指します。ただ最近では「拡散にもっとも寄与するのは、いわゆるスーパーインフルエンサーではなく、多くいる、ただのインフルエンサーたち」だという研究もあり、一般のインフルエンサー(アドボケーツと重なります)が注目されています。
イノベーター
新商品をいち早く購買し、その経験を発信して他社に影響を与える人。1960年代にアメリカの社会学者エベレット・ロジャースが提唱したイノベーター理論からこう名付けられ、市場全体の2.5%を占めるとされています。
アンバサダー
企業から(報酬付きで)任命され、魅力を伝達する人。広告出演しているタレントなども、これに含まれます。
磯部光毅著|手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略 より
こうした「ファン」や情報拡散の鍵となる【支持者】との繋がりを生み出し、商品やサービスとの関与(参加)を深めてもらうことで【自分ごと化】してもらう。そうして理解や共感を高め、ポジティブな情報拡散から購買を刺激しようというのがSNSを介したエンゲージメントの考え方です。
小手先のテクニックを採用するのではなく、届ける情報は常に生活者目線の問題解決に務める
ここは機能するホームページ運用を実現するための考え方と同じです。SNSにおいても、その内容は表面的なニーズだけではなく、潜在的なニーズを解決出来るような内容を投稿するべきです。
ユーザーにとって「ためになる」情報。「こんなにいい情報を届けてくれてありがとう!」と喜ばれ、本心から【いいね!】してもらえる情報を一つでも多く届ける必要があります。
売り込みの強い、商品やサービス情報だけではユーザーは喜んではくれません。自社商品やサービスに付随する深い専門的な知識を活用し、時にそうした専門家から見た時事問題の分析や、本音のアドバイスも効果的です。
因みに弊社Facebookでは、コンテンツの更新のお知らせだけでなく、ITやマーケティングの理解を深めて頂ければと考え、デジタルマーケティングやIT技術に関連したネット上の記事を【キュレーション】するという形で、感想や意見などのコメントを一言添えて紹介させて頂いてます。こうした投稿が繋がりの生まれた方々にとって、なにかしらの問題解決への「気付き」として活かされるのではないかと考えて日々更新を続けています。
SNS運営の最大の成功要因とは
4つ目最後は、SNS運用の最大の成功要因として期待値を上げ、大きく扱ってしまいましたが、、実はとてもシンプルで簡単なことなんです。
それは、SNS運用もホームページ運用と同じようにネットだからといって、着飾ったり、嘘をついたりすることなく、倫理観を持って企業が「人」らしく振る舞うということが大切だということです。
なんだそんなことか、バカバカしいと思われるかもしれませんが、実はこれが本当にとても重要なのです。
マーケティングの歴史からみる社会変化が消費行動に影響する
戦前・戦後の【マーケティング1.0】は大量生産大量販売で、製品に焦点があたった時代でした。
それから1970年代からは【マーケティング2.0】は消費者志向のマーケティングで、顧客満足度を高める時代が続きました。
そして、現代は【マーケティング3.0】と呼ばれ、価値主導のマーケティングと言われています。
フィリップ・コトラーが提唱したこのマーケティング3.0では、人間性が重要視され、精神的な価値や思いが大切になるとされます。この概念下では「どういう社会にするのか」や「世界をよりよい場所にすること」がコンセプトとなります。
そうした流れから、近年は社会的課題に配慮した消費を行いたいという「エシカル消費」も盛り上がり、ミッションやビジョンなど企業の考え方をはじめ、企業活動が社会に与える【価値】が消費者の行動にに大きく関わってくる時代となってきているのです。
この背景には大きくSNSが関わっているとされます。SNSの普及・発達により企業の情報がネット上に溢れ、「ポジティブからネガティブな情報まで全てが拡散されるようになった」。つまり嘘が付けない世の中、嘘がまかり通らない世の中になってきたのです。
プラスして、「社会問題の顕在化」もあげられます。環境問題はじめ、貧困問題、少子高齢化問題などの社会問題もインターネットを通じて広く知ることができ、そうした中「他者や社会、あるいは世界のために自分に何かできないか?」と生活者は考えるようになりました。
「どうせ消費するのなら少しでも社会貢献できるものを」「同じ機能であれば企業としての考え方に共感でき、そこに関わる人達が少しでも幸せになるものを」と生活者は考えます。そのため、その商品やサービスに関するストーリーやイメージが消費行動にも大きく影響を与えるようになってきているのです。
SNSマーケティング成功の心構え
こうしたマーケティング3.0の状況下でSNSマーケティングを成功へ導くための心構えをまとめると、以下3点となります。
絶対に嘘をつかない
嘘は必ずバレます。企業がついた嘘がバレれば、社会的制裁は一昔前(インターネット以前)の比ではありません。生活者は徹底的にその問題に対する責任を追求します。
着飾らない
どんなにカッコいいビジュアルを整えても、中身(内容)がスカスカであればすぐに飽きられてしまいますし、偽物であることバレれば信用を失います。過度に着飾らず本音のアドバイスなり素直な感想、ありのままの情報を届けるべきです。
奉仕マインド
ソーシャルグッド”社会を良くする行為”を生活者は拡散し応援します。損得を考えず社会のためになる情報、生活者のためになる情報を専門的な独自の所見や知識を添えて届けましょう。
ステマ(ステルス・マーケティング)やクチコミのガイドライン
世界的にもSNSに限らずWebを活用したマーケティングを行う際のガイドラインが制定されています。規定を守って、嘘・偽りのない運用を心がけて下さい。
米国クチコミマーケティング協会(WOMMA)
2004年に設立された米国のクチコミマーケティングの推進団体。
WOMマーケティング協議会(WOMJ)
2009年に設立された日本のクチコミに関するマーケティング業界の健全なる育成と啓発を目的とした団体。
マーケティングに関するガイドライン
消費者庁
2011年に作成された景品表示法のガイドライン
「インターネット消費者取引に関わる広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」
まとめ
今回はSNSマーケティングで大切にしたい4つの考え方についてご紹介させて頂きました。
1.しっかりと事前のコミュニケーション戦略(SNS戦略)を設計し計画する
2.顧客との結びつき(エンゲージメント)を高め、ファン(支持者)を獲得しポジティブな情報拡散を行ってもらう
3.更新する情報は常に生活者目線で、専門的なアドバイスに努める
4.倫理観を持ち嘘をつかない。社会貢献の意識を持つ
以上を踏まえ、SNSマーケティングに取り組み、PDCAを回して頂ければと思います。